身体介護において大切な考え方

生徒を相手にする教師や、精神疾患を患った患者を相手にする心理カウンセラーのように、介護士は人間と深いコミュニケーションをとる職業です。身体介護は、誰でもできる肉体労働のように考える人が多いですが、その考えは改めなければなりません。では、身体介護において知っておくべき大切なこととは何でしょうか。

まず、介護の目的は要介護者の希望を叶えることであり、必ずしもお世話をして楽な生活をしてもらうことではない、ということ。中には、介護を最低限にして身の回りのことをできる限り自分で行いたい人や、リハビリを続けて介護のない生活を目指している人もいます。逆に、自立を強く望んでおらず、リハビリはせずにできる限り介護をしてもらいたい人もいるでしょう。介護士は単にお世話をするというだけではなく、要介護者の望みを叶えるにはどのようなサポートが適切なのかを考える能力が必要です。

それを実現させるためには、要介護者の話をよく聞かなければなりません。要介護者が望む生活は一人一人異なります。全ての人を公式に当てはめ、同じ対応をするわけにはいかないのです。要介護者の考えや理想をしっかりととらえ、それに沿った介護プランの作成が必要になります。また、自分の希望をはっきり伝えることができない要介護者は多いです。「介護してもらっているのにわがままを言いたくない」という後ろめたさのためかもしれません。そのような要介護者に対しては、どのような介護を希望しているのかを言動からくみ取る努力や、希望を伝えやすい環境づくりを心掛けましょう。介護士は、常に人間の心理や感情に敏感でなければなりません。